2019年9月29日日曜日

あいちトリエンナーレ2019 に いってみた。



偶然ぽっかりと なにも打合せのない 平日。
これまで取れてなかった 夏休みの一日にしてしまおう。
話題の『あいちトリエンナーレ2019 情の時代』 に 実際 いってみることにしました。
以前blogで、柄にもなく偉そうなことを言ってしまった後ろめたさが 背中を押しました。 

くしくもこの日の報道では 
『表現の不自由展・その後』をめぐる騒動で、愛知県設置の検証委員会が中間報告を纏め、
監修責任者の津田大介氏を痛烈に批判。文化庁は補助金全額の支給を取り止めを発表と。
木村愛知県知事は、補助金不支給には裁判で争う姿勢とのこと。 ここは、知事に一票!

表現する自由を公権力が規制するなど、あってはいけない。背筋が凍る思いがします。
ただ、違う次元で、表現には自制やTPOも必要なはず。たしかめてみねば、なるまい。


新幹線に飛び乗り 車内からネットでワンデー・パスを購入。
開催された4会場のうち 名古屋駅周辺の 3会場。
□A:愛知芸術文化センター
□N:名古屋市美術館
□S:四間道・円頓寺(しけみち・えんどじ)
に絞りました。 駆け足ですが、パフォーマンスやラーニングを除く展示は ほぼ完走。

たちよれなかった会場は
□T:豊田市美術館・豊田市駅周辺
‥谷口吉生氏作品『豊田市美術館』は観てみたかった。以前、酒田の『土門拳記念館』に
 いたく感動したことがありました。次回、なにかの機会にぜひとも。


トリエンナーレ全体を通し、間違えなく言えることはあります。素晴らしい芸術祭 です。

メッセージ性の強い作品から、造形美を実直に追求したものや、‥え!これってギャグ?
と バラエティーに富んだ作品群。会場内のスタッフやボランティアの方々もみな熱心。
特段ドギツイ表現の作品もないので 家族連れでも楽しめそうです。
『表現の‥』の騒動によるネガティブなイメージ付きは、不幸なことかもしれませんが
逆に関心を持って足を運んだ来館者も、きっと多かったことでしょう。(私も含めて。)

気になった作品にふれます。


□N:名古屋市美術館
名古屋駅に早くについてしまったため、開館時間が一番早い会場から。
名古屋市美術館 は 緑豊かな白川公園内に、球体の造形が特徴的な名古屋市科学館と
対をなすように建てらています。設計は黒川紀章。
公園内という設定で計画された黒川氏設計の作品は 埼玉県立近代美術館 もあります。
格子状のエレメントだけではなく、コンパクトに纏めたゾーニングや動線も似ています。
公園内ということで、高さや建築面積などの制約があってのことでしょう。

それぞれ1980年代開館のようで、かつては「ポストモダン」とモテはやされた作風も、
いま見ると、ギリギリ昭和のレトロ感も出てきたようで、それはそれで 風格 です。


[N03]藤井光
戦前日本のプロパガンダ映画『日本道場』と それを現代の若者が忠実に再現した映像。
ふたつを完全に並べてみる。当時の日本の軍国主義を 痛烈におちょくっています。
製作されたのは、当時統治下のあった台湾とのこと。また、[S11]毒山凡太朗 では
当時の状況を知る台湾のお年寄りへの「日本語」でのインタビューという作品もあった。
戦時中の思い出話しや日本の動揺を無邪気に歌われる姿に、どう感じてよいのやら。

[N07]青木美紅
爽やかな色合いの刺繍や絵画で彩られたインスタレーションは、彼女のコメントから、
突き刺さるメッセージであることを知りました。彼女が人工授精で生まれた1996年は、
クローン羊ドリーが誕生し、旧優生保護法が廃止となった年なのだそうです。

‥‥‥
会場内のそこかしこのポスターに A4サイズ2枚綴りのレター が貼られています。
『表現の不自由展・その後』が中止に追い込まれ、補助金支給が問題視されていること
への抗議文です。文面には、河村市長や菅官房長官 といった個人名も見受けられます。
出展者でしょうか、数名の連名によるのもです。

この抗議文は、
他の会場(特に愛知芸術文化センター)でも見受けることになります。

□A:愛知芸術文化センター
名古屋の街並みは、碁盤の目のように整然と整い、道幅も広く開放感があります。
そこかしこに見受けるパブリック・アートや写真の展示など、芸術祭に相応しい都市の、
その中心に位置するような建物は、報道の映像で見るよりも大きく感じられました。
(写真は、前面広場に広がる オアシス21)

[A14]dividual inc.
暗闇の中、24面のモニターと机上のPCに自動的に文字(text)が 打ち込まれていく。
カチャ・カチャ‥ とキーボードの音だけが静かに響く。書かれているのは 遺書 です。
入力のタイミングや文字の削除まで、執筆のプロセスを全て記録するソフトによります。
ただ、書かれていくのは人間の肉筆による文字ではなく、あくまで、テキスト・データ。
個々の人の生の証や死まで、記号化されていく。 デジタル納骨堂 のようです。

[A13]ヘザー・デュイール=ハグボーグ
DNAという生体情報は究極の個人情報。それが許可なく搾取されている現実が恐ろしい。
DNA情報から復元された個人の顔面は、生きたデス・マスクのような精密さが恐ろしい。


[A23]表現の不自由展・その後
展示の中止に追い込まれた このブース。 いま一体どうなっているのだろう‥?
最大の関心事でした。
防煙扉に閉ざされ、来館者のコメントが書かれたカードが所狭しと貼られていました。

‥この大きな扉の先にある 見てはいけない物 って 一体なんなんだ?
知的好奇心が 想像力 を最大限にかきたてます。

‥もしかしたら、このメッセージこそ、はじめっから狙ったモノだったんじゃないのか?
そんな 穿った見方もできてしまうほど、強力なインパクトです。


カードは主催者側が用意したものでしょう、各自書き込みます。お題は二つの選択です。

あなたが日常の中で見つけた、差別や偏見、
我慢や諦めを強いられた具体的なエピソードを教えてください。

あなたは自由を奪われたと感じたことはありますか?
それはどのようなものでしたか?

‥あらためて問われると、私には浮かびませんでした。
すでに貼られているコメントを見てみると、
職場や家庭、古い慣習や概念、性差別‥ ローカルで個人的な不平不満が目を引きます。

‥‥‥
名古屋市美術館内で見受けた A4サイズ2枚綴りの抗議文。
この 愛知芸術文化センター内では より多く目にします。そして
抗議のため いくつかの展示は 自らその展示を取りやめています。ストライキです。

私は この行為には 大きな違和感を覚えました。

表現者である以上 表現の規制への抗議は 表現を持ってして行うべきではないのか。
‥ たとえば、菅官房長官に『令和』でなく『検閲』と書いた額を持たせちゃう、とか。
私ですら、それくらいのことは思いつきます。プロの表現者なら、なおのことでしょう。

ましてや、観に来た方々は、私も含めて入場料を払って観にきているはずです。
本来観られるものが、観られなのなら、その分の入場料は払い戻しされるのか‥?
そんな議論も 成立してしまいます。

展示のストライキは 筋が違うと 私は思います。


□S:四間道・円頓寺(しけみち・えんどじ)
市内の地下鉄の駅からも少し離れた、円頓寺商店街を中心とした会場です
お洒落なカフェやバーが、寺院や古民家とが共存する、じつに愛すべく商店街です。
いまだ生活している古民家内や、古ビルの一室や商店で作品の展示がされていました。

[S08]キュンチョメ
あるトランスジェンダーの少年(少女)が、自らの名前と性を変える という過程を
静かなドキュメンタリー映像で綴ります。両親との関係に、暖かいものを感じました。

[S08]弓指寛治
数年前に実際に起きた交通事故。被害者で亡くなった小学生達と、事故の加害者とを
インタビューとイラストでトレースしています。冷静で客観的な視点が刺さりました。


商店街での古びた建物の一角での展示らしい、これらの作品は、一見極めて個人的で
ローカルなモチーフですが、[A23]表現の不自由展・その後 の防煙扉に貼られた
無数の叫びに 似ているな、とも思えるのです。

アーチスト が作品を発表することを リ・リース と言うことがあります。
発信する側は、自らの経験や考えで作品をつくるのでしょうが、リ・リースされたら
受信する側は、それを咀嚼し自らの解釈にしたり物語にしたりします。
作品とは そういうものでなくてはいけないと、思えるのです。


あいちトリエンナーレ2019
自ら体験してみてよかった。