2014年6月14日土曜日

新国立競技場・基本設計の全貌と改修案


新国立競技場の計画をめぐる3つの記事に目がとまりました。


工事費(とりわけ人件費)の高騰から、公共工事の入札が予定金額
に納まらず、入札そものが不成立になるケースが増えてるとのこと。
この解体工事の入札不成立も、一連のこの流れでしょう。

工事費の高騰は、もちろん民業も圧迫しています。
私の仕事にも、これまでにない影響がありました。

特に職人さん不足の問題の背景には、根深いものがあるようですが、
東北の復興とともに、オリンピック特需による影響もあるでしょう。
経済効果も期待のひとつであったであろう東京オリンピック招致が、
逆に巷の仕事やお金の流れをフリーズさせてる、というヒニクです。


2.新国立競技場の基本設計の全貌

コンペにより選出された、ザハ・ハディット氏の新国立競技場計画。
近未来感覚の斬新な造形美の味が薄まってしまい、残念な感じです。

そもそも
当初のコンペ案から大幅な見直しが必要となった要因は予算でした。
コンペ案の条件は1300億円の予算。見積ると3000億円と、倍以上。

これって、コンペ要項の違反じゃないのかなあ。
もちろん、提案時で見積作業の時間的問題もあったでしょう。また、
ガチにピッタリ予算に納める、ということも現実的ではありません。
そこは、承知してます。
ただ、コスト意識も計画案作成には、重要なファクターのはずです。
コンペ時点で、今回の基本設計に近い案が提案されるべきでしょう。

この新国立競技場のコンペとは比較になりませんが
私も、民間のあるコンペに参加したことがあります。
他の著名な建築家の方々が、条件の予算を全く無視したコスト感覚
の案を提案することに、びっくりしたことがありました。
こういうことで、『建築家』という職業を浮世離れしたものとして
しまいます。予算の大幅な見込み外れとは、恥ずかしいことのはず。
まして、新国立競技場の建設費用は血税です。


3.伊東豊雄氏が現国立競技場の改修案

新国立競技場のコンペにも参加した伊東豊雄氏が、建替計画に反対
という立場である学者の中沢新一氏からの依頼、という形での提案。

東京五輪の招致が決定してから
著名な建築家の方々から、ザハ・ハディット氏の新国立競技場案に
異議を唱える、大きなうねりがありました。
風致地区としての景観問題、地域の歴史的背景、維持管理のコスト、
反対意見として、どれも 正論 のようにみうけられます。
ただ、その正論であるがゆえ、違和感もおぼえていました。
『こうしましょうよ』という、目に見える対案がありませんでした。

伊東豊雄氏の改修案。とってもいいと、私は思います。
古い物でも大切に使う 日本人の『もったいない』精神の象徴です。

都知事が五輪会場計画の全面見直しを表明しました。
この改修案を、ひとつのアンチテーゼにおわらせないチャンスです。

予算も1400億円と ストライク。
伊東氏には、当初からこの改修案をコンペで提案してほしかったな。
新築を改修としたことも、予算が大幅にオーバーしたことも
コンペの要項違反 ということで言えば 同じでしょうから。