『空家』の増加が、社会問題となっています。
総住居数はすでに総世帯数を超えており、総住居数に占める空家の割合である
『空家率』は、平成25年度の時点で13.5%(7~8戸に1戸は空家となります)
これが、確実に年々増加していくことになるわけです。
住宅のマーケットにおいて、新築住宅より中古住宅の流通を活性化させるべく
昨年の宅建業法の一部改正により生まれた制度が『既存住宅状況調査技術者』
来年4月より、既存住宅の売買には、既存住宅状況調査技術者による調査報告
が必要となります。消費者に安心感をもってもらおう、ということでしょう。
既存住宅状況調査技術者 になれるのは
登録機関による講習を受けた 建築士 に限るとのこと。
大きな変革であることは明らかです。私も講習会に参加することにします。
講習会を申し込んだ登録機関は、所属する東京建築士会。
ほぼ丸一日をかけた、かなりのボリュームがある講習と考査となりました。
既存住宅の調査は、基本的に目視によるもの。
調査方法も、足場を掛けたりする必要がない比較的簡易な方法がおもです。
調査対象の住宅が、設計図書通りであるか、建築基準法に適合しているかを
調査するものでもないそうです。
少なからず 疑問が湧いてきました。
当然のことながら、どの調査技術者も同じ結論を目指すことになります。
それでは、仕事の内容(調査や報告書のクォリティー)での調査技術者間の
競争は生まれません。むしろ、調査やその報告書が綿密であればあるほど
商品(住宅)の価値を下げることになりかねない、という皮肉も感じます。
調査報告書(概要)の説明も、
既存住宅状況調査技術者自身ではなく、宅建士が買主におこないます。
これでは、プレゼン力においても個々の調査技術者の差別化はできません。
では、どういった基準で
この業務は この調査技術者さんに お願いしよう‥ となるのでしょか?
料金です。料金だけです。
‥どの調査技術者が もっとも安いのか?
これでは建築士にとって、健全な業務 とならないでしょう。
不動産の売買において、業者さんの手数料基準は厳格に決められています。
既存住宅状況調査技術者にも、厳格な報酬基準は必要ではないでしょうか?
かつて 耐震偽装事件がきっかけでなされた建築基準法等の改正のさいも
あまりにも早急な改変は、矛盾と混乱をうみました。
いましばらく この制度を見守りましょう。
初秋の木陰にて。