神奈川県立近代美術館鎌倉が今月末で閉館になる。
ル・コルビジェの日本人のお弟子さんのひとりである 坂倉準三氏の設計。
終戦間もない1951年に建設された、近代建築の傑作のひとつ。まぎれもない。
『日経アーキテクチュア』最新号の特集に急かされ、昨日改めて見学しました。
敷地は鎌倉・鶴岡八幡宮の境内。
閉館は、宮との借地契約によるところだそうで、1966年に増設された新館と
学芸員棟は取り壊されるも、本館の建物そのものは残されるそうだ。嬉しい。
平家池を取り込む形にせり出すピロティーと列柱は、やはりル・コルビジェの
サボア邸を思わせる発想に加えて、水面の光の反射を利用した幻想的な演出も
素晴らしい。建設当時の、厳しい物資や予算の中で絞り出されたアイディアで
あったのであろう緊迫感が、空間全体の緊張感へと伝わっているかのようだ。
私は、建物全体のプロポーションが好きです。
(『日経~』の記事内容と多少 かぶりますが。)
プランニングは 対称性をすこしずらした 微妙な非対称性を持っています。
法隆寺の伽藍配置に代表されるように、絶対的なシンメトリー構成を目指す
西洋建築とは違い、シンメトリーに 若干のくずし を加えることにイキを
感じる、我が国独特の美意識です。
生花で言うところの 『しん・そえ・とめ』『天・地・人』 という発想。
これは、この建築のプランニングにとどまらず、鶴岡八幡宮の境内における
配置にも見て取れます。 源平池に浮かぶ 旗上弁財天社 と 近代美術館。
新・旧施設が 左右両外に並ぶ 境内のレイアウト。
その意味でも、本館の建物は残されるべきなのでしょう。
コレクションも 良い。
松本竣介、佐伯祐三‥ なぜか、若くして世を去った画家の作品が多かった。
たくさんの来館者。
別れを惜しんでいるようだ。
愛された建築。幸せな建築。