2016年1月8日金曜日

恋人たち‥『よしっ!』

気になっていた『恋人たち』。仕事にキリがついた勢いで観てきました。
原作・脚本・監督の橋口亮輔氏は、数年前『ぐるりのこと。』を観てから
タダモンじゃない。とは思ってましたが、この作品も評判通りの佳作です。
(今日の新聞でも、キネマ旬報第1位と。)

橋口氏の説明では、脚本は俳優陣(ズブの素人からベテランまで)との
ワークショップから生まれた作品とのこと。ほぼ無名の役者さんたちの
多くが、本名のままの役名である。リアルな感情をよくぞ引き出してる。

社会の片隅に生きる名もなき人々数組の、機微のやり取りを交互に微妙
に絡めながら 人生の再生 をテーマにしている。

橋口氏は 面白い職業に目をつける。
『ぐるり~』では、裁判の法廷画家の視点で、時代をトレースしていた。
『恋人たち』では、主人公(の一人)アツシは首都高速の橋脚の点検を
行っている。都内の首都高速のほとんどが運河の上部に掛かっているが
その運河をゴムボートで渡りながら作業を行う。
運河の静かな流れやゴムボートの目線から眺める東京が、どこか美しい。
( そいえば、タモリさんのTV番組でも紹介されてたな。 )
そう。東京(江戸)は本来、運河の町であったのだ。
そこに1964年の東京五輪。景観よりも効率性の面で、運河に架けられた
首都高速道路。2020年の東京五輪に向かう 東京の再生 という観点も
かけられているかのようだ。

安直なメッセージが用意されているわけではない。
ただ最後の アツシの『よしっ!』というセリフ。
爽やかな未来を 予見しているようだった。