2021年2月5日金曜日

THE TOKYO TOILET_クリエイターの公共トイレ・見聞録


「THE TOKYO TOILET」 というプロジェクトがあります。
先日、渋谷の明治通りで偶然見つけた 神宮通公演トイレ<あまやどり>
に感動したことをきっかけに、いろいろ調べて知りました。

「THE TOKYO TOILET」は日本財団と渋谷区等がすすめるプロジェクト。
これまで「暗い・汚い」と敬遠されていた公共トイレをクリエイティブの
力によって変えていく取り組み。ユニークな発想と、素晴らしい挑戦です。

都内渋谷区17ヶ所の公共トイレが、著名なクリエーターによりデザイン

され、すでに現時点で7ヶ所が完成し、実際に使用できる状態ようです。

すでに配信されている多くののレポートや動画がネット上にありましたが

自らの目で、この7ヶ所全て巡って、見てみようと思い立ちました。


プロジェクトに関わる方々へのリスペクトとともに、いち使用者の目線で

考えてみたレポートです。失礼がありましたら、どうかご容赦のほど。




□神宮通公演トイレ<あまやどり> 安藤忠雄

  男子WC 小便器:2 大便器:1

  女子WC 大便器:1

  だれでもWC 大便器:1


衛生を保つ通気性・防犯効果にもなる解放性・プライバシー確保の密閉性

アルミの縦格子をぐるりと回し、通り抜けさせる動線で一気に解決させる。

胸のすくような デザイン だ。

残念なのが、ネットフェンスがグルリと囲んでいて、バリアフリーならぬ

バリアとなってしまっていること。明治通り側から気楽にアクセスしたい。

大きな庇は明治通りに張り出すくらいでもいいかもしれない。

小雨の夕暮れ、公共トイレの前で待ち合わせ‥。なんて、粋じゃないかな。


○○○


残る6ヶ所は、平日の半日をかけて巡りました。

まずは、京王線幡ヶ谷駅から「西原一丁目公園」へ



□西原一丁目公園トイレ 坂倉竹之助

  WC-1 小便器:1 大便器:1

  WC-2 小便器:1 大便器:1

  だれでもWC 大便器:1


公園内にシンプルなボックス形状の中に3つのブースが並ぶ。

内部は半透明の壁面に外の緑が映り込む明るい空間で、居住空間のようだ。

ただ「だれでもWC」以外の2ブースは男女兼用で、小便器と大便器が並ぶ。

便器は合計5器 あるのに 同時使用人数は3人

これは、ちょっと無駄じゃないのか…というのが、第一印象だったのですが


 一般的なトイレ整備の目標とされる便器数の充足、待ち時間解消といった

 “数”や“時間”という数値とはまた別の魅力を持たせることでみんなが

 「利用したいと思う」トイレを創出することが、この敷地では重要と‥


‥という坂倉さんの解説に納得。


ただ(これは、いささか下世話で恐縮ですが‥)男女ふかり同時に入室して

フシダラな使い方をされちゃう、という危惧はないだろうか‥。

昨年詳らかになった「多目的トイレ」での、ある芸人の不謹慎な行為のこと

があります。国交省が「多目的トイレ」「多機能トイレ」という名称やめて

「バリアフリートイレ」にするという報道がありましたが、この事件も起因

しているのかもしれない。公共空間として、相応しい使われ方を望みたい。


今度は、行燈のように明るくなるという夕刻に、あらためて来てみよう。


○○○


新宿駅まで戻り小田急線代々木八幡駅から「代々木深町小公園」へ



□代々木深町小公園トイレ 坂茂

  男子WC 小便器:1 大便器:1

  女子WC 大便器:1

  だれでもWC 大便器:1


これも、公園内にシンプルなボックス形状の中に3つのブースが並びます。

透明なガラス張りで普段は中の便器まで丸見えですが、入室して鍵をすると

ガラスが曇り室内が見えなくなるという仕掛け。近未来的なデザインです。

なるほど、これなら防犯上の問題もなく、みんな綺麗に使ってくれるはず。


ただこの日は、ガラスはずっと曇り状態のまま。

ブース内には「使用の際には必ずカギを!」の貼り紙も。


ある女性芸能人の、完成したばかりのトイレを見聞する動画をYouTubeで

見てみると、やはり、透明のブースで鍵をかけずに用を足す男子がいます。

この女性芸能人さんも、初めて入るのに、些かためらいがある様子でした。


○○○


すこしだけ、歩きます。

はるのおがわプレイパーク」は「代々木深町小公園」のすぐお隣でした。

子供たちが小屋を建てようと丘の上で大工仕事をしている。楽しそうだな。


 ここは自分の責任で自由に遊ぶ公園です。

 子どもたちが「やってみたい!」を最大限カタチにするチャンスのある

 遊び場です。子どもたちが自由に遊ぶためには「事故は自分の責任」と

 いう考えが基本です。


車でよく通る井の頭通り沿に、こんな素敵な公園があるとは知らなかった。

この公園の一角に、色違いで全く同じ形状の公共トイレがあります。



□はるのおがわコミュニティーパークトイレ 坂茂

  男子WC 小便器:1 大便器:1

  女子WC 大便器:1

  だれでもWC 大便器:1


目的の公共トイレに向かっていると「はるのおがわ~」のスタッフの女性が

親しげに話しかけてきたので、いろいろ聞いてみました。

曰く

「はるのおがわコミュニティーパークトイレ」も前記の「代々木深町」同様

 ガラスはずっと曇り状態のまま。

 それは、電気系統の故障によるところ、と聞いている。

 トイレに入る時も、出る時も、恥ずかしがっている人がいた。

 夏は、内部が暑くなってたまらない。云々。あまり評判よくありません。


現時点では、コンセプト通りには上手くいっていないのかもしれません。

ドア吊元の納まりなど、気になる箇所もがありました(…手に注意の貼り紙)

機械仕掛にしろ、設備機器にしろ「動くものは壊れる。」

建築の造形的手法で挑戦で、坂さんの作品をみたかったな。


これからの運用で、どう立て直していくか。注目です。


○○○


残り3ヶ所は、いずれもJR恵比寿駅周辺です。

夕暮れがせまり、急いで巡ることにしました。

これまでのトイレは、プロダクトとしてどんな場所でも成立する形状でした。

恵比寿の3作品は、計画地の形状などに起因した部分があり、より建築的な

発想のように感じました。



□恵比寿公園トイレ<ワンダーウォール> 片山正通

  男子WC 小便器:2 大便器:1

  女子WC 大便器:2

  だれでもWC 大便器:1


恵比寿公園内に、木目を残す型枠材によるコンクリート壁を一見、不規則に

配置し、男子WC、女子WC、だれでもWCへの動線を巧みに整理している。

セレブ感の出る仕上げというイメージでしたが、土着的な厠の雰囲気を上品

に表現することに成功していると思います。してやったりでしょう。

思いのほか、開放感もありました。




□東三丁目公衆トイレ 田村奈穂

  男子WC 小便器:3 大便器:1

  女子WC 大便器:2

  だれでもWC 大便器:1


JR山手線が走る土手法面と公道との細い敷地に、巧みに計画されています。

折り紙をイメージしたとゆう形状と、ビビットな赤い色がアクセントですが

すでに都市の風景の中に馴染んでしまっているようです。風景ってすごい。


唯一、公園空間と絡まず公道から直接アクセスできる公共トイレでしたが、

タクシーの運転手さん達が、ひっきりなしに用を足すため入っていきます。

小便器も肩を寄せ合うよう、ぎりぎり3器。使われがいがありそうです。




□恵比寿東公園トイレ 槇文彦

  男子WC 小便器:2 大便器:1

  女子WC 大便器:2

  だれでもWC 大便器:1


公園内の赤いタコの遊具と対比して イカのトイレ と言われるそうです。

男子WCとその洗面、女子WCとその洗面、そして だれでもWC という

5つのキューブを樹木を取り囲むように配置して、動線・視線を整理する。

有機的な形状の鋼板屋根で連結させて、一体感を出している。


欄間の半透明ガラスは、鋼板屋根と間の隙間で、通気性も確保している。

残念なのは、白い壁面が、雨の返しや足跡で汚れてしまっていることだ。

それでも、やはり胸のすくような巧みなデザインだ。


○○○


駆け足になってしまいました。


公共トイレが、単に用を足す施設から、都市のアイコンになっていました。

維持管理に、ご苦労もあるでしょう。使う側も気をつけて清潔に保ちたい。

これから出来上がる残りの作品も、チェックしていきましょう。


さいごに

日本財団 笹川順平常務理事 の動画。

とっても わかりやすい説明。添付しておきます。




2021年1月30日土曜日

東京のトンネル

私のiPhoneの中の Photo から。


2021.01.27

渋谷神宮通りから宮下公園へ向かう山手線等の高架下

ドラマの場面にもよく登場する


2020.06.08

高輪ゲートウェイ駅北。第一京浜から旧海岸通り方面へ

タクシーが通るのに難儀するので、通称『提灯ごろし』


2016.03.08

大井町線下神明駅近く。新幹線・湘南新宿ライン高架下

海の中を描いた小学生のスケッチを、壁面に写している


2016.04.05

第一京浜・第二京浜を結ぶ計画道路の歩道部分

戸越公園。都立大崎高校の近く、いまだ建設中


2021年1月28日木曜日

渋谷_新らし風景とそのままの情景。

渋谷での打合せへ向かう午後の「明治通り」を、ひさしぶりに歩いてみた。
再開発が進む渋谷駅の高層ビルが近くにそびえる。
街並みも、ほんの少しの隙に新らしくなっていく。

神宮通公園に 安藤忠雄設計の公衆トイレ「あまやどり」を見つけた。

クリエーターによる公衆トイレを、2021年夏までに区内の公園など17箇所

設置するという『THE TOKYO TOILET』プロジェクトのひとつ、とのこと。

渋谷区と公益財団法人日本財団によるこのプロジェクト。「おもてなし」の

こころを公衆トイレから、とは、面白い発想だ。



この 神宮通公園トイレ

格子を用いたデザインは、解放性と通気性を確保しプライバシーも守られる。

色使いも繊細で『和』の感じ。通り抜けができる動線も明快。サインもいい。

ただ、ネットフェンスに囲まれたような配置は、管理上のことでだろうか‥。

明治通りから気楽にアクセスできた方が、よかったのでは? ちょっと残念。


宮下公園も商業施設と一体で「MIYASHITA PARK」としてリニューアル。

かつての宮下公園に、あまり良いイメージを持っていなかった方々も多いか

と(私も含めて)思いますが、清潔で開放的な空間に生まれ変わっています。




最上階の公園スペースまで 利用者は上がってくるのだろうか?

いわゆる『ヒキ』 デパートでの、屋上遊園地や最上階の催物会場などです。

ただ開放感さえあれば、そんな施設は必要ないようです。

ふと、愛知芸術文化センター前の施設『オアシス21』を思い出しました。

まさに都市の中のオアシスになるのでしょう。



再開発がなされながら

渋谷駅側には昭和の佇まい満載の一角『のんべい横丁』が残っています。

覗けば、一坪ほどの小料理屋が肩身を寄せ合うように軒を連ねています。

カウンターの常連らしき孤独な年配客の相手は、割烹着の女将がひとり。

「MIYASHITA PARK」の1階、渋谷川暗渠上の路地に面した『渋谷横丁』

の、若者達が集う開放的で活気のある大型居酒屋と、あまりにも対照的。



この地域も、一体化して再開発されるべきじゃなかったのか。と思う反面。

いつまでもこのままであってほしい‥。切ない気持ちになってしまいます。

緊急事態宣言が明けたなら、どこか一軒、暖簾をくぐってみようか。




2021年1月10日日曜日

陰翳礼讃:谷崎潤一郎


文豪・谷崎潤一郎による 『陰翳礼讃』(いんえいらいさん) 

1933年。昭和の初期に著されたこの随筆は、建築家の必須科目のひとつと

言われつつも、恥ずかしながら、これまで通して読んだことがありません。

お正月には NHKのETVで「THE 陰翳礼讃 ~谷崎潤一郎と日本の美~」

という番組にも感動。この機に、きちんと向き合ってみることにしました。


陰影、そして陰影の中の仄かな灯の中に佇む美意識。

住居に限らず、食事や衣服、慣習。生活の中に潜む、そのさりげない美学は

現代であって、そこかしこに感じます。精神のDNAのようなのもでしょう。

ただ

独自の文化をもった「東洋」 と それを侵食せんとする「西洋」

美意識を大切にする「文化」 と 利便性のみを追求する「文明」

そんな対峙する関係が強調され過ぎているようで、違和感もありました。


~引用〜

もし東洋に西洋とは全然別個の、独自の化学文明が発達していたならば、どんなにわれわれの社会の有様が今日とは違ったものになっていたであろうか、と云うことを常に考えさせられるのである。たとえば、もしわれわれが、われわれ独自の物理学を有し、化学を有していたならば、それに基づく技術や工業もまた自ら別様の発展を遂げ、日用百般の機械でも、薬品でも、工芸品でも、もっとわれわれの国民性に合致するような物が生まれてはいなかったであろうか。

~引用〜


たとえば、東洋の独自の文化のひとつに「禅」があります。

禅の思想に基づいた「枯山水」の日本庭園は、石や砂によって究極に簡素化

された表現により、自然の風景や宇宙までも象徴させたものです。

この禅の思想に大きな影響を受けた西洋人が、スティーブ・ジョブズです。

彼が作り出したスマートフォン・iPhoneの究極に簡素化された造形・操作性

は、まさに禅の思想によるものです。そのiPhoneは、いまや多くの日本人に

とって必須アイテムとなり、生活環境の一部にもなっています。


90年も前の谷崎が、この状況を見たらどう考えたでしょうか。

未来を予見するということは、かくも難しきことに思えます。























・・・


1988年。ベルリンの壁開放前のヨーロッパをひとり、旅をしました。

オランダのアムステルダムで、ヨスという若夫婦の家で数日を過ごしました。

普段は日本からの留学生が使っている一室での、今で言うところの民泊です。

夕方、彼らの家に戻り、部屋中の照明を付けていくとヨスに言われました。

「へい、タカシ。なんで家中の照明を付ける必要があるんだい?

 僕も日本に行った時、みんなそうしているのに驚いた。変だよ。

 灯はぼんやり、読書ができる程度に灯れば充分じゃないかい?」

たしかに、そのとおりだな。私は言葉がありませんでした。


アムステルダム国立美術館のレンブラントの『夜警』は、大きな絵画でした。

彼の多くの肖像画と同じく、陰影とそこに差し込む光の表現は、まさに圧巻。

そして1600年代に活躍したこの画家は、今もオランダの英雄でいるのです。



・・・


陰影の表現ということで、思い浮かぶことがもうひとつ。

これもまた、建築家としての必須科目のコンテンツです。

1982年公開。リドリー・スコット監督による『ブレードランナー』

酸性雨が降りしきる近未来のL.A. 逆光の照明を多用するR・スコット監督

の演出は、暗黒の都市の喧騒に、深みのあるリアリティーを与えています。

この作品による闇の表現方法は、その後 ジェームス・キャメロンばかりか

多くの映画監督に影響したのではないか、と私は考えています。



陰影とそこに潜む光への美意識。

東洋の独自のものではなく、元来 人間が持つ精神のDNAなのでしょう。

2021年1月3日日曜日

初夢_2021

いま私は、以前設計したあるお宅の3階に来ている。

内部はコンクリートの打ち放し仕上げで西側と北側に大きな開口部がある。

外を見渡すと、水平線が広がる大きな湖。東面にも小さな窓、やはり湖だ。

これほど眺望がよいなら、なぜもっと大きな開口部にしなかったのだろう‥


気がつくと、建物全体がゆっくりと動いている。

よく見ると、観光客と思しき見知らぬ客人達が外を眺めているではないか。

「旦那も、この遊覧船に乗りにきたんで? 天気もよくて、いい眺めだ。」

人懐っこそうな中年男が絡んでくる。すこし煩わしいな。


小一時間の遊覧を終えた船(建物)は湖畔についた。

船着場の料金所の窓口の細面の中年女性に、料金を払うついで聞いてみた。

「ここには何隻の船があるんですか?」

「4隻です。」

「どんな船があるんですか?」


「コンクリートで出来てるのもあるよ。」

こんどは、斜向かいにすわる、意地悪そうな男が答えてきた。

(貴様‥、ヒトのものを勝手に使って商売しているな!)

「なにか、わるいんかい?」

グッとこらえて、ここは苦笑いの大人の対応をしておこう。

訴えてやる。船着場の料金所を出て、住宅街の坂道を上っていく‥。


・・・・・・・・・・

ここまで。

なんだこれは。 「富士」も「鷹」も「茄子」も出てこなかった。

今年は、どんな年になるのやら。




2021年1月1日金曜日