いま私は、以前設計したあるお宅の3階に来ている。
内部はコンクリートの打ち放し仕上げで西側と北側に大きな開口部がある。
外を見渡すと、水平線が広がる大きな湖。東面にも小さな窓、やはり湖だ。
これほど眺望がよいなら、なぜもっと大きな開口部にしなかったのだろう‥
気がつくと、建物全体がゆっくりと動いている。
よく見ると、観光客と思しき見知らぬ客人達が外を眺めているではないか。
「旦那も、この遊覧船に乗りにきたんで? 天気もよくて、いい眺めだ。」
人懐っこそうな中年男が絡んでくる。すこし煩わしいな。
小一時間の遊覧を終えた船(建物)は湖畔についた。
船着場の料金所の窓口の細面の中年女性に、料金を払うついで聞いてみた。
「ここには何隻の船があるんですか?」
「4隻です。」
「どんな船があるんですか?」
「コンクリートで出来てるのもあるよ。」
こんどは、斜向かいにすわる、意地悪そうな男が答えてきた。
(貴様‥、ヒトのものを勝手に使って商売しているな!)
「なにか、わるいんかい?」
グッとこらえて、ここは苦笑いの大人の対応をしておこう。
訴えてやる。船着場の料金所を出て、住宅街の坂道を上っていく‥。
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ここまで。
なんだこれは。 「富士」も「鷹」も「茄子」も出てこなかった。
今年は、どんな年になるのやら。