2018年7月28日土曜日

家族の肖像・『未来のミライ』と『万引き家族』


『家族』をテーマにした 話題の2本の映画。
描かれた家族像が対極にあることに気がつき、面白いです。

「何があっても 遠くだけを見る‥」
福山雅治のカッコいい台詞と、細田守監督作品ということにひかれ
『未来のミライ』 昨日鑑賞してきました。
4歳の男の子・くんちゃんと そのおとうさんとおかあさん一家に
ミライちゃんという女の子が生まれたとこから 話ははじまります。

くんちゃんが時空を超え、過去や未来の家族と触れ合うという物語。
ここは予告編のお約束通り。
映像表現や音楽も素晴らしい。なのに、いまいち感情移入できない。
‥何故なんだろう。

おとうさんとおかあさんは、横浜の閑静な住宅地に住んでいます。
いわゆる中流より、ちょっと上の夫婦のように思えます。
子育てに奮闘するおとうさんは、おそらく監督ご自身の姿なのでしょう。
ただリアルなのはそこだけ。カネの話も男女の生々しいやりとりもなし。
まさに アニメならぬ絵に描いたよなホームドラマの世界感。
そして時空を超えて出てくる家族は みんな血の繋がりを持つ血縁者。
家族が、いはば『縦の関係』のみで描かれていることに気がつきます。


カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』
是枝裕和監督が描いた家族も、お父さん お母さん 兄 妹 の四人。
しかし 彼らには 血の繋がりはありません。 いはば『横の関係』
貧困や犯罪といった不条理な現実に喘ぎながら懸命に生きる、こちらの
家族のほうに 私はより強いメッセージを感じます。

家族の有り様は すでに多様化しているはずだ、ということでしょうか。

ところで
『未来のミライ』
くんちゃん・ミライちゃんのお父さんは建築家。 私と同業者です。

Mac Book でVectorWorksを操り、3Dのレンダリングまでしちゃう。
バウハウスやザハ・ハディッド、清家清の作品集が本棚に並んでいる。
設計した自邸は、実在するか、少なくとも実際に実施設計されている。
建築家の実務がリアルに描かれているようでいて、私はここにも違和感
を 覚えます。

クライアントとの打合せ、役所との折衝、現場でのやりとり‥。
実際の建築家の仕事の多くは、他者とのやり取り、いはば『横の関係』
の部分で成り立っています。
仕事を家庭でしているというのであれば、家庭以外の部分が描かれて
いないことも、逆に家族のリアル感を薄めているように思えるのです。

『万引き家族』では同居するアキ(松岡茉優)が風俗店で働いています。
この風俗店内の非・日常的な雰囲気が、日頃この一家が暮らしている
汚ったない家の中と対比しています。 ハレ と ケ の関係です。

家庭以外での存在をはっきり持っていてこそ
家庭の中で 家族 を意識できるのもなのではないのでしょうか。

いろいろ いっちゃいましたが
『未来のミライ』と『万引き家族』 
どちらも劇場で観るべき作品でしょう。 おすすめ。