2014年11月25日火曜日

建築の力

ギャラリー間

『エマージング・グリッド(生成するグリッド)』
なにかの生命体を思わせる、三次元状に広がるチューブの構造システム。
壁・天井・床といった概念を消し去って、まるで洞窟のような空間です。
この構造システムを思いつき、具現化しただけでもすごいところですが、
オペラ劇場(大小3ステージ)の複雑な機能を、絶妙に埋めこんでいる。
伏図で観ると、配置に全く無駄がない。見事、というより信じられない。

展示空間は、とかく 抽象的な表現でおわりそうなところ
コンペの当選案から実施案への変遷や、現場の作業の悪戦苦闘ぶりなど
リアル感が迫力があって、楽しい。

ドキュメント映像では
発注者である台中市の市長は、この建築を夢と例えています。
建築現場の所長は、なしとげた仕事を誇らしく語っています。
‥建築 ってすごい力があるんだなあ、と つくづく。

その建築力が、いま日本で、東京で期待されているのが、建替えられる
『新国立競技場』(ザハ・ハディド設計)と、いうことなのでしょうが、
その建替工事への反旗として、改修工事案を公表したのも伊東豊雄さん。
少し、あやも感じました。

当初のコンセプトを具現化できたという、幸福な建築 という側面も
このオペラハウスにはあるのかもしれません。

2014年11月19日水曜日

新語・流行語大賞

今年も新語・流行語大賞の候補が発表されました。
私の予想も、いくつか当たっていたようでした。
いそぎ、下記の言葉も候補に加えていただきたい。

『不器用ですから‥』
『往く道は精進にして 忍びて終わり悔いなし』

高倉健さん ありがとう。おつかれさま。

2014年11月17日月曜日

高さ制限へのパブ・コメ

東京都大田区がすすめる 絶対高さ制限を定める高度地区
第一次素案 に対するパブリックコメントを下記のように送付しました。

基準法に係る建築物に対する高さの制限はじつに複雑で、一般の方には
なかなか理解するのが難しく、それもひとつの問題だなと考えています。
一般の方にも、出来るだけ分かりやすい主張となるよう、つとめました。
________________________________

建築物の絶対高さ制限の導入には、基本的には賛成です。
ただ、ひとつ規制を加えれば環境が良くなるだろう、といった短絡的な
発想ではなく、既存の建築物の高さ規制と絡めて総合的に規制の計画が
なされるべきす。

すでに建築物の高さに係る規制には、建築基準法上に道路斜線制限等の
高さ制限や日影規制、採光面積などが存在しております。

その中でも特に、高度地区による斜線型高さ制限(高度斜線制限)は、
建築物の形体と街並を歪なものとする弊害でしかありません。
この高度斜線制限(第二種、第三種)を撤廃することで、空地率を
上げた建築物の計画を促すことにもなり、容積率を確保しつつ、さらに
厳しい絶対高さ制限も可能になるはずです

別紙に、ひとつの例としまして
第一種住居地域(建蔽率60%・建蔽率200%)での改訂案を示します。

大田区におきましては、総合的な判断と行動をお願いいたします。



2014年11月15日土曜日

計画は法規との鬩ぎあい

知人の建築家・小林真人さんの作品のオープンハウスに伺います。
大田区大森駅近くにある、竣工間近にひかえた集合住宅作品です。

最上階のオーナー邸を含む建物費用は、1階店舗と基準階住居の
賃貸部分の収益で償却し、相続対策にも、という、事業としては
比較的オーソドックスなストーリーのようです。

当方も、こういた集合住宅計画は得意なところ。
私ならこう計画するな‥と考察しながら見ていくためでしょうか、
限られていたであろうコストの範疇で、日影規制や高度斜線制限
といった法規制とのせめぎ合いに リスペクト をおぼえます。

敷地の形状や高低差の影響で、一見複雑にみえるプランニングも
ゾーニングは意外とシンプルで明快。参考にいたしましょう。

2014年11月14日金曜日

人として。建築家として。

昨晩は有楽町よみうりホールにて、建築家・内藤廣講演会 『3.11以降の建築』
(東西アスファルト事業協同組合・田島ルーフィング主催)

内藤先生の、東日本大震災の復興へ向けた活動を通し考えてこられた内容です。
建築家が、その作品に作家性を追い求める行為。
それが、文化や経済を動かす、ひとつのファクターであったことは認めつつも、
目の前に広がる被災地の復興の手助けとして、人として何をするのか、という
現実との乖離に、葛藤されていた、ということ。

私は、内藤先生のように復興への大きな手助けができるわけではありませんが、
建築家が、その作品に作家性を追い求める。という仕事への、違和感を感じる
ことは、(被災地ではない)日常の風景の中であっても、ときどきあります。

簡単に答えが出せるものではない、と言われつつも。
ひとつ、これかな。と 例に出された被災地福島県の建築『福島県教育会館
(設計は、当時前川事務所に在籍されていた大高正人氏。)
バルコニーから眼前の阿武隈川をのぞみ、背景の山並みにとけ込むシルエット。
構造や機能のシンプルな構成‥。絶賛されていました。(私も訪れてみたい。)

ただ、その内藤先生の感動とは
私が、内藤廣作品『安曇野ちひろ美術館』に感激した内容に通じることにも
気がつきます。葛藤のこたえの一部は、ご自身の内面にすでに存在していた
やに、思えてくるのです。


講演会をあとは、有楽町駅から新橋駅まで、JRのガード添いに歩いてみる。
ガード下の飲みや街も風景が変わった。バリケードされた空き空間が目立つ。
バブルの頃には隠れ家的なクラブもあったな。ハメを外したことを思い出す。
ただ今日は、ちょっとだけ吞んで帰るとしました。

2014年11月13日木曜日

ヒッチハイクの旅人

ヒッチハイクをしていた旅人をピックアップしてあげる。思えば人生初体験のこと。
関越道のPAの駐車場。『東京方面へ』と書かれたスケッチブックを掲げた若者だ。
映画のように、親指出したカーボーイハットの美女では(残念ながら)なかったが
純朴そうな青年の様子に免じて、愛車への同乗をゆるしてあげた。

‥どこまで、どうやっていくつもり?
‥福岡まで。ヒッチハイクでいきます。どこかのPAまでお願いできないでしょうか‥
‥ ・・・・はあ?

聞けば
なにかの出会い系SNSで知り合った女性のところへいって、同棲するのだとゆう。
なにごとも経験を重ねてきた者としては、ツッコミどころ満載の返事をしてきた。

‥それってホントに 彼女 なの?
私の質問の意図を理解したようで、彼は少しにやけて 大丈夫です。と、一言。

動機はどうあれ、行動力には リスペクト したところでもって
環八の用賀にある東名高速入口近くの マクドナルド まで送り届けてあげよう。
ここは東名高速でゴルフ場などに向かう待ち合わせスポットとして有名なところ。
車内で『名古屋方面へ』と書き込んだスケッチブックを掲げて、がんばってくれ。

2014年11月9日日曜日

国際紛争の悲劇と喜劇

今日の Googleのトップページのロゴ。
ブランデンブルク門を背に、かつて存在したベルリンの壁の上に集う人々の姿。
25年前1989年の今日は、東西冷戦の象徴・ベルリンの壁崩壊の日とのことです。

二次大戦の敗戦国ドイツは
アメリカを中心の西側自由主義側と、東側共産主義の当時ソ連側とで領土が分断。
東ドイツに存在したベルリンは、西側・東側との境界は物理的に壁で仕切られた。
壁を超えようと数々の悲劇が起きたことに対し、礼を欠く物言いではありますが
自由な往来が出来ないよう 壁 で仕切っちゃうとは、じつに滑稽な所業でした。

1988年壁崩壊の前年。
西ドイツのボンから、列車で西ベルリンに向かいます。
車内で簡易的なビザが発給されると、列車は東ドイツ国内に入るのですが、その
車窓から垣間見えた東ドイツの風景に、思わず興奮してしまいました。
グレーにくすむレトロな街並に戦前を思わすクラシックカー‥ 映画のセットか?
まさに、映画『バック・ツー・ザ・フューチャー』リアル体験版であります。

東西を仕切る壁の検問所のひとつ、チェック・ポイント・チャーリーの西側には
『壁美術館』なるものがありました。人々が、どんな手段でこの壁を越えようと
試みてきたのか、ジオラマやイラストで紹介されています。
あるものは鳥人間と化し、あるものは荷物のトランクに身を隠し、双子の姉妹は
入れ替り作戦をし‥と 命がけの決行であったものが(‥いささか不謹慎な文言
をお許しいただきたい。) ギャグ に見えていました。

‥その ギャグ ということで括りますれば
昨日、米国CIAが『アルゴ』作戦の真相を公表、という記事が目にとまりました。
1979年イラン革命の最中、首都テヘランの米国大使館から脱出した大使館員を
救出すべく、ウソのハリウッドSF映画『アルゴ』の撮影クルーを仕立てて入国し、
6人の大使館員を無事救出した、という ホントかよ~? という実話のこと。
まんま『アルゴ』として、映画はアカデミー作品賞を受賞しました。
‥私も楽しみました。主演で監督のベン・アフレックは、名優なのか大根なのか
 よくわかんないとこが、よかった。おすすめ。
CIAの曰くは、映画や製作者に敬意を表しつつ、いくつかデフォルメはあっても
ホントにあったことだよ‥。 と、いっていることのようです。


争いは 悲惨で愚かしい。
愚かしさだけを見ていられるのは、身近な場面では平和を実感しているからです。
そのことを、忘れないでいたい。
悲劇ではなく、世界中に笑顔が溢れますように。

2014年11月7日金曜日

建物の高さ制限は、やっはり変わるべき。

都内大田区がすすめている『建物高さに関するルールの変更』
先日、パブリックコメントの募集に先立つ『第一次素案の説明会』に参加してきました。
会場では、レクチャーを行う大田区まちづくり管理課の中に懐かしい顔を見つけました。
もう25年以上も昔の修業時代、大田区の建築審査課にて何度かやり取りをしたF氏です。
レクチャーが始まるまで、しばし昔話を楽しめました。
当時は私も若かったので(‥平均GLの取り方だったかな。)指導にくってかかりました。
いまでは、思い出のひとつです。

そんな昔のよしみとはウラハラに この『第一次素案の説明会』
ちょっとど~よ ‥と思えた事柄が2つありました。

ひとつは素案の内容。
新聞の折り込みで入っていた大田区報の内容には、高度斜線制限(北側からの斜線制限)
を絶対高さ制限を絡めて全て刷新するようなニュアンスで描かれていました。先月の記事
ところが、素案の資料を見ると、現行の高度斜線制限はそのままに、プラス絶対高さ制限
を導入する、ということのようです。

そもそも区報に、単純に『絶対高さ制限を導入しようと思います』となぜ書かなかったの
かも疑問ですが、絶対高さの指定値や算定方法も複雑で、何がナンだかよくわかりません。
そんなことより、高度斜線制限(あるいは高度地区の指定)を撤廃して、絶対高さの制限
だけにすればシンプルで、一般にも理解しやすいはず。歪な街並も解消にむかうでしょう。
そうであれば、素案にある絶対高さの指定値は、もっと厳しくてもよいでしょう。

もうひとつは 録音されていた、ということ。
レクチャーに先立ち、区側から録音する旨通告され、壇上にICレコーダーが置かれました。
企業がクレーマー対策に用いる手法。自由闊達な質疑を期待するべく場には馴染みません。
ただ、説明会がすすむにつれ、その意味も理解できてきます。

説明会の参加者が、本当にクレーマーと化して壇上のお役人さん達を詰問しだしたのです。
隣のマンション建設なんとかしてくれ…、道路にひびが入った…、この辺は海だった…? 
個人的なものから、よく分からないものまで、素案の内容とは直接関係のないことばかり。
そういった苦情は、区役所の窓口でおこなえるもの。この場では、マナー違反です。
お役人さん達にも ご苦労があることは 理解します。

パブリックコメント
私も提出するつもりです。
このblogでもオープンにする予定です。