2015年7月25日土曜日

新国立競技場と欧州での公共建築のこと。

新国立競技場の計画案の見直し問題。
TVやネットでのいろんな意見に頷いたり、小首を傾げたりしていますが、
ただ、盛大な国際コンペで選ばれた計画案が、結果的に実現できなかった
という〝メカニズム〟だけは、つまびらかにされるべきでしょう。

公共工事の公開コンペ。ということで思い出したことがありました。
オランダの ロッテルダム という街を訪れたときのことです。
1988年。いまから27年もむかしのこと。
私は、リュックを背負って欧州を気ままに一人旅していました。
ロッテルダムという街は、第二次世界大戦でそれ以前の建物のほとんどが
焼失してしまい、新しく創り上げられつつある都市の建築はみな近代的で、
いはば現代建築の見本市のような街でした。

とある大きな公園の敷地内にある美術館にはいると、ある展示室の壁一面
大きな建築模型3点と、その図面が展示されています。
同じ敷地内に建設される 新しい図書館の計画案3点 ということでした。
(そのうち1点は、建築家レム・クールハス氏の作品だったと思います。)
どうですか? 一票。
プレゼンを真剣に眺めていると、美術館の担当者から声をかけられました。
投票できるようなのです。(部外者のワタシでも。)しからば清き一票を。
この票。計画案の決定にどのような影響があるのか、あるいは予想票なのか。
言葉が未熟な私にはよく分かりませんでした。建築の外見の人気投票だけで、
大切な公共物の建築を決めてしまうのでは、いささか乱暴な話でしょうが、
建築決定に、なんらかの形で市民が参加している光景は、微笑ましく思えた
ことを覚えています。


この欧州の旅の目的のひとつは
建築家ル・コルビジェの建築を、生で見てみることでした。
代表作ロンシャンの教会にたどり着いたのは、ちょうど27年前の今日です。
存在感のある外観。朝日を背に差し込むマリア像のある内部空間に感動し、
一日を過ごした夕方、郵便局から東京の友人夫婦に国際電話をかけました。
この日、電話する約束になっていたのです。
はたして 聞こえてきたのは Happy Birthday! の輪唱です。
最高に嬉しい誕生日プレゼントでした。
あれから人生折り返してしまったわけで、光陰矢の如し。ということです。